発達障害の仕事について読者の方からの質問に答えてみました
発達障害(アスペルガー、ADHD)の仕事ぶりとは
「生き方」研究所ブログをはじめてもうすぐ3か月が経とうとしています。
ちょうどこの記事が50記事目52記事目になりますが、少しでもお役に立っていますでしょうか。
まだまだ書きたいことは山ほどあります(ただ表現するのが案外難しいんです・・・)ので、ADHDですがあせらずのんびりと、価値あることだけを書き続けていきたいと思います。
なお1点お知らせです。
スマートフォン版にのみですが、「今後の更新予定」と「所長の近況」というコンテンツを(本当に簡単ですが)掲載を開始しました。
こちらは時間の無いときでもなるべく更新しますので、よろしければご覧ください。
さて、ありがたいことに当ブログへこれまでいくつかメッセージやご質問をお寄せいただいていますので、今回はそちらに対して回答をしていきたいと思います。
発達障害の仕事、特にアスペルガーにおススメのデータアナリスト
では、今回はこちらの記事でおススメしている職業、わたしの仕事であるデータアナリストについてのご質問です。
(元のご質問の主旨は変えず、表現を一部修正させて頂いています)
1)コミュニケーション能力について:
データアナリストとして調査データから作成した提案書や企画書を他部署の社員または外部クライアントへ提出する際に求められるコミュニケーション能力は、どのように鍛えられましたでしょうか?
また、うえすと様の職場では、ADHDのデータアナリスト志望者に対してでも、高いコミュニケーション能力は求められますか?
まずはコミュニケーションに関するご質問です。
わたしの場合、今の職場に入ってから上司に鍛えていただいたのと、読書会で何度もミニプレゼンをしたことでかなり上達しました。
本を読んでコミュニケーションの本質をつかんで、あとは実践してフィードバックを受け、悪いところを修正していくことの繰り返しです。
どこかの記事にも書きましたが、わたしもアスペルガーですのでコミュニケーションに関して前職までは非常にお粗末なものでした。
どのくらいお粗末かというと。
これは前職で上司に対して部署の予算の推移予測の説明をしようとしたときのことですが、自分ではいい出来と思っていた分析結果を予めパワーポイントの資料数枚へ落としてまとめていました。
そしてミーティングでその資料を使って話し始めたところ、始めてから10秒くらいで先輩社員に、
「いやいやちがうちがう」
とストップされ、全部代わりに進行していただくくらい、アスペルガーなわたしは自分中心の世界に住んでいました。
「相手が知りたいと思っていることしか伝わらない」
というコミュニケーションの鉄則を知らずにひとりよがりの資料作成しかしていなかったのです。
伝えることも技術のうち、といまの職場の上司にパワーポイントの作り方を教えていただいてからは、
・相手は何が知りたいのか、(潜在的にも)どうなりたいのか
・こちらは相手に何を伝えたいのか、どうして欲しいのか
・そのためのロジック(左脳への訴え)または感情デザイン(右脳への訴え)はどうするべきか
をじっくり考えて資料を作ることで、事前準備が可能なコミュニケーションであればかなりうまくいくと思います。
参考書としては、以前もご紹介していますが
がコミュケーションの本質をつかむための読み物としてもサンプル集としても優れていると思います。
もし場数を踏んでレベルが上がってきたら、
プレゼンテーション・パターン: 創造を誘発する表現のヒント (パターン・ランゲージ・ブックス)
こちらもより本質的でおススメです。
コミュニケーションはつまるところ、「あなたが本気で伝えたいと思っていることは何ですか?」を理解したところから始まるのです。
(くどいようですがそれにはまず自立しましょう、ということに・・・)
なおADHDでもレベルの高いものを求められるか、という点では「YES」です。
ただしここでいうレベルの高いコミュニケーションとは、セールスに必要な「打ち解ける力・雑談力」ではなく、アスペルガーが得意としている物事を論理的に説明して理解を得る能力です。
それであればたとえ発達障害、アスペルガー、ADHDだろうと時間をかけて資料を作り構成を考えれば何とかなります。
そして例えダメだったとしても、せいぜいわたしたちが障害者雇用ではないことを知らない人から「あの人は頼りにならない」と思われる程度です。
死にはしません。
そのときは、向こうも自分の業務を早く進めるためにこちらを無視して上司へ直接いろいろと依頼してくれますから、アスペルガーとしてはかえって楽です(笑)。
(2)ケアレスミスについて:
ADHDの特性である不注意が原因のケアレスミスは、この職種においては(またはうえすと様の職場においては)、あまり深刻な状態になりにくいものなのでしょうか?修正や調整が臨機応変に対処できやすいものなのでしょうか?
2つ目はADHDの天敵、というか生涯の友人、ケアレスミスについてです。
正直に言えばわたしの業務ではミスしたときのインパクトは大きいです。
外資系企業は日本企業のように厳密な承認ルートや業務フローができていない場合があるため、この意味で極端にいえば前職では部長や本部長が決裁していたような額の処理をADHDでアスペルガーなわたし一人で行うようなリスクがあるからです。
わたしはADHDもあることから、ミスが出ないよう非常に注意深く作業をしてダブルチェックをしているので、業務処理のスピードはかなり遅いと思います。
ということはそれで何とかなる量しか仕事はもらってはいけないですし、発達障害者側でも管理をする必要があります。
なお一つ印象として補足するとすれば、外資系はKPI(目標管理対象になっている数値)の最終的な結果さえ良ければ、日本企業のようにその途中のプロセス・業務の緻密さみたいなものはあまり求められていないと思います。
日本企業の細かさに慣れていれば、多少ざっくりベースの感覚でも受け入れられる土壌はあるかもしれませんね。
なので修正や調整はしやすい環境だと思います。
なお一般的なデータアナリストでも、もちろんデータを間違えては問題ですが、グラフが多少ズレていたとしても相手が受け取る印象さえ変わらなければ問題無い、というような点だけ見るとやりやすいのかもしれません。
(3)仕事量、納期、マルチタスクについて:
データアナリストとして作業のボリュームや(短い場合の)納期へのプレッシャー、また同じ時間帯に違う案件や作業などを同時にこなす必要が発生した場合、過去にうえすと様でどのように対処/解決されたかご教授いただけますでしょうか?
3つ目は仕事量や優先順位の問題です。
まず、仕事のボリュームは障害者雇用だろうと発達障害者だろうとADHDだろうとアスペルガーだろうと、放っておけば非常に大きくなります。
しっかり自分のキャパシティ(できる範囲)を把握して、できれば通常はキャパシティの50%程度になる程度の業務のみに限定してまずは担当させてもらうべきです。
それを前提に、それでも降りかかってくる仕事を全部片端から終わらせていたら到底カラダがいくつあっても足りません。
なので、考え方として「自分ができる範囲、使える時間の中で最大の結果を出すために処理するべき業務と優先順位は何か」は常に持っておく必要があります。
この正しい認識があれば、多少重めで細分化しないといけない大きな仕事の一部分でも、すぐに完結できることから手をつけたくなる誘惑(
発達障害・ADHDのための仕事の「先延ばし」の苦しみから解放される唯一の道とはの記事参照)にも勝て(るときがあり)ます。
また処理するべき業務は何かを選択するときに、
「自分はこの業務をどうしていきたいのか」
「どんな方向に進めて行きたいのか」
について結論を持っておくべきです。そうしないと業務の改善が進みません。
ルーチンワークをこなすだけでは成果は出ない、を意識しましょう。
大変難しいことですが、ぜひトライしたいポイントです。
そして作業を同時にこなすのはわたしは無理です。
電話メモ・議事録すら書けません(汗
なのでそういった局面が来たときは素直に申し出てどちらかに絞ってもらうべきです。
もしどちらかを自分で選ぶときには、ビジネスインパクト(売上に影響すること)の大きいと思われるほうから先に処理することにしています。
あと、納期へのプレッシャーはもちろんストレスですが、その他のストレスと比べても大差はありません。
納期に間に合わせることは大前提として、しっかりマインドを保てていれば(自立できていれば)、いまでは回復にそれほど長くかかるような大きな負荷・苦労ではなくなりましたね。
・・・以上、答えになっていますでしょうか?
もちろん職場や業務、障がいの程度によってそれぞれ異なると思いますが、あくまでわたしの一例として、ご参考にしていただければと思います。
その他にも引き続きご意見、ご質問などありましたら、
hlifelabo@gmail.com
までメッセージよろしくお願いします。