OriHimeに大人の発達障害克服のヒントとコミュニケーションの未来像を見た話
OriHime開発に見る「喪失体験の解決」を天職にする方法とは
【こんなことが書いてあります】
・分身ロボット「OriHime」の開発者吉藤オリィさんの講演を聴いてきた
・「OriHime」のクオリティは素晴らしく、コミュニケーションの未来を担うプロダクトだと感じた
・引きこもりや不登校を経験された吉藤さんの生き方は、わたしたちにとっても大変参考になる魅力に満ちていた
地下鉄の駅へ着くと、ホームにはずいぶんたくさんの若い人が電車を待っていました。
せまくてむし暑い駅の中を抜けて地上へ出ると、何となく見覚えのある広い交差点。
そうか、何度か来たことあったかな?
何となく懐かしさを感じながら、駅へ向かう人の流れに逆らいながら早稲田大学へ向かいます。
この日は早稲田大学ソーシャルアントレプレナー研究会の公開講座。
先日のワークショップでご一緒した大学教授にご紹介を頂いて、人生で3度目の早稲田大学訪問になりました。
キャンパスへ入り、11号館を探します。
大隈さん像の横を抜けてそれらしい大きな建物へ入ったものの、そこが本当に11号館なのか分からない…
時間はすでに開始予定時間を少し過ぎていて、わたしは焦っていました。
するとエレベーターホールに「ソーシャルアントレプレナー研究会 公開講座は7階 エスカレーターをご利用ください」の文字。
これだ!
いま考えるとエレベーターで8階まで上ってから1階降りればよかったんですが、そのときは素直にエスカレーターで7階へ。
これもけっこう時間がかかりました…
そしてようやく目的の教室が見つかりました。
受付を済ませ、汗を拭きながら教室の中へ。
中では既に講演が始まっていました。
前方左側にスライドが映し出されていて、中教室ほどの場所にはだいたい70人くらいの学生や社会人が熱心に聞き入っています。
わたしは空いていた一番右端の席につき、手帳を出しながら状況を確認しました。
壇上では、全身黒ずくめ・白衣ならぬ「黒白衣」を着た若い男性が、自身の生い立ちについて話しているところでした。
コミュニケーションロボット「OriHime」の開発者、吉藤オリィ(健太朗)さん。
少年時代、3年半に及ぶ強度の鬱と引きこもり、不登校を経験されたエンジニア・起業家です。
※7/25追記:吉藤さんご自身が発達障害ということではありません。
高専時代、独創的なアイデアの車いすを自作し、高校生エンジニアが集まる世界大会にまで参加した吉藤さんは、そこに集まる世界中の同世代のエンジニアと交流し、たいへんな衝撃を受けたそうです。
「彼らがいま取り組んでいる分野に、人生をかけて貢献する、という信念にあふれる人ばかりだった。自分は車いすにそこまでの情熱はなかったんです」
その後、吉藤さんの全ての意欲は少年時代に実体験したつらく苦しい「孤独感」を解決することはできないか?という方向に向かいました。
その結果生まれたのが、分身ロボット「OriHime」です。
OriHimeの説明をはじめた吉藤さん。
「うまく動かないことがある」 という前フリ通り、吉藤さんの呼びかけに対してうまくアクションできない様子。
…というのは、実は軽いジョークだったことに後で気づかされました。 OriHimeが自らの人工知能で反応しているように見せかけていたんです。
吉藤さんと息の合った動きを見せ始めたOriHimeは、実は遠隔操作されていて。
操縦はなんと、4歳のときの事故でこれまで22年間寝たきりの番田雄太さん(オリィ研究所広報担当)が、あごでやっているということです…
かろうじて声の出せる番田さんが遠隔から行う生プレゼンを聞いた時は、本当に衝撃的で思わず涙がにじみました。
それは、障害を持つ番田さんに対しての特別な感情だけではなく。
「孤独を癒やす」ということの本質を考えたとき、ペットや友人のように振る舞えるロボットの開発から方針転換し、本人が実際に遠方でコミュニケーションを取るためのツールを開発する、という発想に至った吉藤さんの信念の深さ。
そして実際に、あたかもそこに本人がいるかのようにコミュニケーションを取る気にさせてくれるOriHimeの動きのクオリティの高さ。
たくさんのOriHimeが社会のコミュニケーションインフラになっている未来。
それらが混ざりあって、なんともいえない気持ちになったからです。
現在はALS(筋萎縮性側索硬化症、アイスバケツチャレンジで存在が広まりました)の方向けにオーダーメイドで機器を開発したり、遠方にいるため結婚式に出席できない方向けレンタルなどを行っており、量産体制も整ってきています。
すでにTV・WEBなど様々なメディアに登場し、海外でも多く活躍しているOriHime。
OriHime(オリヒメ)医療・介護ロボットの活用 - YouTube(WBS)
オリィ研究所 | ノルウェーの公共テレビ局NRKにて放送されました。
来週火曜日までは新宿伊勢丹「みらいの夏ギフト」特設展で実物が見られるようですので、興味のある方はぜひ足をお運びください。
(予定が合わない方は、上記ノルウェーの動画をチェックしてみてください。とてもよくイメージが湧きます)
わたしたちは大人の発達障害のおかげで「人生に何が足りなかった」のか
この話題を扱ったのは、元々3年以上強度の鬱で引きこもり・友達もわずかだった吉藤さんの生き方に、わたしたちが参考にすると役に立つところが非常に多いと感じたからです。
自分が「ない・なかった」と認識している体験。
これを解決するための方法を広げる・つくるモチベーションというのはおそらく万国共通、まさに天職はこうして生まれてくると思っています。
わたしたちには何が足りなかったのか。
何が足りないから苦しんでいるのか。
何があったら、わたしたちはこうならずに済む(済んだ)のか。
こうした自分の半生への問いが、信念と情熱を持って生きる人生、天職探しにきっと必要ではないでしょうか。
そしてまた吉藤さんはこの講演で、こんなようなことを強調していました。
「自分が本当にいいと思ったことは、たとえまわりからバカにされたとしても、やり続ける」
「まわりの言うことはすべて本当にそのとおりなのか、改めて考えてみる」
そうなんです。
「自立」関連の記事でご説明している通りのことになりますが、基本的に周囲の世界の雑音は「ああ、そういう考え方もあるよね」程度にとどめておけばいいんです。
周囲の目はいちいち気にせず、自分の情熱に生きる。
この感覚がわたしたちのよりよいこれからの人生のために、あるといいなと思います。
参考記事:「夏目漱石に学ぶ、自分の生き方発見法とは?」http://self.hatenablog.com/entry/2015/04/25/162400
ただ…何らかの手段でお金を得ないと生活ができないので、その点だけは周囲の世界と自分の世界の基準をすり合わせていくバランス感覚も重要です。
どうかお忘れなく。
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