天職を生きる社会起業家の事業内容と原体験の関係について
天職を生きる社会起業家の情熱を探った「soar スペシャルサンクスイベント」
ご無沙汰しています。うえすとです。
記事を書けないでいたこの1か月で、ずいぶん夏に近づいてしまいましたが…
ようやく今年度の第1四半期にも目途がつき、少し余裕ができましたので記事を更新しています。
さて、前回の記事でクラウドファンディングのご紹介をさせていただいた、さまざまなマイノリティの方々の生き方を記事にされているsoarさん。
無事に予定額の250万円を上回る300万円以上を調達することができたそうです。
このブログをきっかけにご支援いただいたみなさま、ありがとうございました!
ちょうど今日、東京・目黒のソーシャル起業家コミュニティスペースimpact HUB Tokyoで、クラウドファンディングの出資者が参加したスペシャルサンクスイベントが開催されており、わたしもご招待いただきましたので少しレポートしたいと思います。
当事者が立ち上げた、つらい心を支えるサービスたち
今朝の目黒は、前日よりも少し湿気もなく、さわやかな晴れ間が広がっていました。
休日の朝10時。
まだそれほど人気もない目黒駅前を抜けて、soarのライターさん、soar代表の工藤さんと待ち合わせているサンマルクカフェへ向かいます。
イベントは午後からでしたが、イベント記事を書くことになっているライターさんに、わたしのインタビュー記事も書いていただけるということで…
午前中はインタビュー&撮影をしていました。ちなみにライターさんはわざわざ三重から!ありがたいです。。
そして午後。
会場になっている東京・目黒のソーシャル起業家コミュニティスペースimpact HUB Tokyoは、目黒の駅から目黒川へ向かっていき、川を渡ってすぐのとてもいい場所にありました。
川から路地を入っていくと、印刷工場のような建物が正面に見え…
壁には
「Questioning+Action=Impact」
の文字。ああ、どうやらここがhubなんだ、とこれを読んでわかりました。
入口もこんな感じです。
中へ入ると、30席以上のイスはもう半分くらいうまっていました。
soarさんのイベントではいつもいただけるドリンクを受け取りつつ、最前列へ。
まずは近くの人との自己紹介でアイスブレイク(場をやわらげること)をしつつ…
最初のセッションは、うつ病患者向けのオンラインサービス「U2plus」創業者の東藤泰宏さんと、気軽に心の不調を相談できるオンラインカウンセリングサービス「cotree」代表の櫻本真理さんが登壇されました。
この2つのサービス、ご存じの方はいらっしゃるでしょうか?
どちらも運営者はうつ病当事者で、自分の体験をもとに必要性を感じて立ち上げたサービスだそうです。
まずはU2plusの東藤さんのプレゼンから。
東藤さんのことは詳しくはsoarさんの記事を参照いただくとして、印象に残ったのはとにかくうつで体調が悪いなかでサービスを立ち上げ、継続されてきている、ということでした。
東藤さんは、
「自分には原体験がないから自由な形でサービスを立ち上げられた」
と言っていましたが、
「自分がやらなければ誰もやらない気がした」
「これさえ立ち上げられれば燃え尽きてもよかった」
とも言っていて、わたしが天職といえる活動の条件であると思っている
1.自分が「当然こうあるべきだろう」と思っていることとがある
2.現実とのGAPに出会い衝撃を受ける
3.自分の理想へ現実を近づけていくための活動にだけ情熱が生まれる
というパターンがあったからこそ、体調不良も乗り越えられたのではないかと感じました。
これはcotree代表の櫻本さん(soarさんの記事)についてもそうだと思います。
仕事で疲弊して精神的につらくなったとき、周囲には弱さを話せる人がいない…
こんな現実に直面したとき、あるべきだと思う環境に近づけるため、いまのサービスを作り上げる力がうまれる。
こんなことなのかなと…
なおこの2つのオンラインサービスは、いずれも解決の「入り口」を気軽にオンラインで提供することに意味があると話されていました。
確かに、うつ状態やカウンセリングを必要としているような状況の人でも、支援を受けることに何らかの抵抗を感じてしまう人がいるとすれば、こうしたライトな場が入口としてあれば、本当に必要なリアルな支援にも届きやすいんだろうなと思います。
なお余談ですが…わたしもカウンセリングは何度も利用しましたが、確かに精神的に疲弊しているときの予約は面倒で負荷が多く、つらいときすぐに話せないのは不便だと感じたことはあります。
ただどうしてもすぐに話したいときは、電話のカウンセリングサービスを利用できました。
対面のカウンセリングについても予約の煩雑さについては「こんなもんか…」と思っていたので、自分でサービスを立ち上げるほどの情熱は生まれませんでした。
ところが、櫻本さんにはきっと何かその点に強い事前の思い入れがあり、その自分のイメージと現実のあまりのGAPに脳が強く反応してしまった。
同じ現実に直面しても情熱が生まれるか生まれないかは、おそらくこの違いです。
意識してか無意識かにかかわらず、何か思い入れがある事象について自分のイメージと異なる現実に触れ、脳が反応して、自分の思い入れのあるイメージに自分の周囲の環境を近づけたくなる。
この原体験からくる、不思議なエネルギーが生まれる活動そのものを、「情熱」とか、「天職」とか、「志」と呼んでいるようです。
ちなみにこのメカニズムの応用ですが、もし自分の活動に引き込みたい相手がいたときに、相手にも似たような情熱を感じて欲しいときは、以下のような方法を取ることが考えられます。
1.事前にある程度、問題に対して「あるべき状態」を情報としてインプットしておく。
2.その後、リアルな現実を画像や動画ではなく「直接」見せる、現場に連れてきて全身で感じてもらうことです。
ちなみにこのあとご紹介する吉岡さんは、政府や官庁の関係者に「2」の方法をとり、当事者を官庁まで連れていき、陳情などをされるそうです。
わたしの考える「効果的な訴求方法」と重なっていて、印象的でした。
まだメカニズムとしては仮説の段階ですが、状況証拠としては多すぎるほど揃っていると思うのです…引き続き、研究を続けたいと思います。
勤務時代に感じたGAPを、独立して自ら天職として埋めていく
この流れは次のセッションでも同じです。
NPO法人PEACESの代表、小澤いぶきさん(児童精神科医で元東京大学先端科学技術研究センター特任研究員。)と、同じくPEACESの理事でもあり国際人権NGO「Human Rights Watch」で勤務されている吉岡利代さん。
わたしも何度かPEACESのワークスペースで直接お話しさせていただいた小澤さんは、勤務医時代に直接感じた、
「自分がやっていることは対症療法でしかなくて、根本的な解決にならない」
という想いから、みずからPEACESを立ち上げ、地域に「心の安全基地」をつくり、家庭が心の安全基地になりづらい子どもをその中で育む、という「仕組み」をつくっています。
おそらくここにも、児童精神科医を目指すほどの子どもへの関心がありながら、あるべき現実がなかったことからくる情熱がありそうです。
吉岡さんも、学生時代に人と人の「違い」について深く考え・感じたことがあり、マイノリティ支援の仕事をされていると語っておられました。
…すいません、レポートするといっておきながら、気が付けば自分の研究のことばかりになってしまいました。
しかも最後のセッションは子どもが帰宅する時間もあったので参加できませんでした。残念…
でも改めて、わたしがここで進めている天職の見つけ方の研究の先には、「みんな違う世界(環世界)に生きている」「みんな大事にしているものが違う」「自分の大事なことがあるからこそ、相手の大事なことも大切にしてあげられる」ということを誰もが理解して生きていける社会があると感じました。
引き続きがんばります。
さて、今回ご紹介したような方々のリアルなストーリーがsoarさんの記事として掲載されています。
他にも多数のインタビュー記事、情報などが掲載されていますので、気になった方はぜひご覧くださいませ。
以下、告知です!
理事をさせていただいている、MESA(発達障害学生支援研究会)の第4回研究会で講師として1時間程度お話をすることになりました。
大人の発達障害当事者として障害者雇用を経験した中で、いくつかの印象的なことを思い出しながら当事者・支援者・雇用先それぞれの立場からできる支援の方法などを話し合える場にしていきたいと思っています。
講演のあとは交流会もご用意しています。
場所が多摩の明星大学のため少し都心部から時間がかかってしまいますが、週末で翌日はお休み…という方で支援のあり方・早期退職についての対策に想いのある方、ちょっと変わったイベントに出て刺激を受けたい…という方などなど、ぜひお待ちしています!
日時:8月5日 19:00~20:50
場所:明星大学 多摩都市モノレール「中央大学・明星大学」駅より徒歩5分
お申込み先URL(こくちーず):
http://www.kokuchpro.com/event
***<ファーストシーズン「大人の発達障害改善のヒント」全78記事の目次はこちら>***
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