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発達障害の「生き方」研究所 | Hライフラボ

転職4回、うつで1年の休職歴あり。30歳を過ぎてADHD・アスペルガーまで発覚した人間が、妻と娘の育児のためにもがいた結果… 「生きづらさ」と戦いながらそこそこ稼ぐためのHライフラボ的・生き方3.0とは?

自立と他者配慮の意識を育て、「生産性向上」と「働き方改革」の推進を

大人の生き方3.0 自立

発達障害者雇用に必要な「他者配慮」と生産性の関係

 

雪の予報はあたって。

 

1月20日の金曜日、東京は大寒の暦のとおり、朝から雪がちらつくような寒い一日でした。

 

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そんな悪天候の中、しかも週末、金曜日の夜に。

 

今回も多摩にある大学の1室をお借りして、発達障害学生就労支援研究会(MESA)

が開催されました。

 

前半の講演会では、中央大学文学部教授で精神保健指定医の山科満先生がご登壇。

 

「発達障害者の就労における医療の役割と限界」というテーマでしたが、先生いわく「本には絶対に書いていない話」を、約1時間にわたって解説いただきました。

 

 

朝から雪が降るような寒さの中、東京から約1時間かかる多摩まで、週末金曜日の夜に。

課題解決のために集まった支援者、大学学生課、企業、当事者の方々が、ひとつひとつの言葉にうなずきながらメモを走らせていた姿が印象的でした。

 

 

講演いただいた内容と合わせて、これからの発達障害を含めたダイバーシティ就労と「日本人の生産性を高めるための働き方」の展望を書いてみたいと思います。

 

 

発達障害の定義から学ぶヒト(他者)の見る世界のちがい

 

あくまで先生のお考えですが、

 

・中枢神経系の発達の微細な凸凹(偏り)をベースにした特性ゆえに適応に困難が生じている状態」を発達障害とよぶ

 

・遺伝子が強く関与しているものの、遺伝子の異常ではない

 

ということをまず示されたうえで、発達障害の症状は、もともとは人類の生存に不可欠だった素質の一部が凝縮されて表現されたもの、と仮説を提示されていました。

 

 

以前、どこかの環境では有利だった(いまの社会でたとえて言うと、偏差値が高い人とか)特性が、いまの日本社会ではあまり合わないだけ、ということです。

 

 

なぜADHDやアスペルガー症候群の特性を持つ人が増えてきたか。

この原因にはいろいろな説があります。

障害が知られてきただけとする説から、化学物質のせいだという説まで。

 

その中で、発達障害就労の課題と向き合ううえでなくてはならないたしかなことは、「自分と違ったまわりの環境の認知のしかたを持っている人とどう付き合うか」という視点を持った人材の重要性が高まっている、ということです。

 

 

これはたとえば支援者の側から当事者の思考を考えたとき、「もしかしたら自分たちが当然と思っている目の前の仕事のプロセスについて、意識の中にそもそも入ってこない部分があるのかもしれない」ということを考えることです。

 

そしてもちろん支援者・当事者の中でも、視覚優位の人、聴覚優位の人、ADHD傾向の強い人、自閉傾向の強い人、などなど、カテゴリーに分けられないくらい、その視点はちがいます。

 

見た目は「人間」という同じかたちをしていますが、中に搭載されているソフトウェアは、実はひとりひとり違っている。

そして時には、いままでの自分の常識でははかれないくらい、大きく違っていることもある、ということも認識することが、おたがいのコミュニケーションを工夫していくときのポイントになります。

 

・参考書籍:

医師のつくった「頭のよさ」テスト 認知特性から見た6つのパターン (光文社新書)

ハーマンモデル―個人と組織の価値創造力開発

 

 

知識量がちがうとか、能力が高い低いの問題ではなくて。

そもそも、「体から脳へ」という外部環境を知覚するセンサーとプロセッサの処理方法のちがいで、生きている環境自体の感じ方と考え方がまったくちがう、ということへの理解の問題です。

 

たとえば、以前もご紹介したかもしれませんが…

目の見えない人が生きている世界が、目の見える人とどう違うのか、がとてもうまく表現されている本がこちらです。

 

目の見えない人は世界をどう見ているのか (光文社新書)

目の見えない人は世界をどう見ているのか (光文社新書)

 

 

同じ物理世界に生きていても、人のセンサーや脳、さらには経験(意識・無意識の記憶)の違いで、世界の感じ方がここまで違ってくるということがよくわかります。

 

わたしはといえば、妻とのコミュニケーションでこのことをたいへん実感しています。。。

 

 

もちろん特性の問題で、主に言語を扱う能力が高くない場合、他者の視点(気持ち)を「想像」することもできないかもしれません。

 

・参考書籍:想像力―創造の泉をさぐる (講談社現代新書)

 

その場合は、一緒に働く周囲の人が、その人が生きている世界を想像して、(配慮というよりも)協力して働いていくことが必要になります。

 

 

この「自分と他者はちがって当然」というヒト環境が無いと、発達障害の雇用を含めたダイバーシティの活用はうまくいかないと思われます。

 

 

そればかりか、社員の生産性さえも上がらない、ということが最近の研究でわかってきました。

 

 

Googleの生産性分析が物語る「他者配慮の重要性」

昨年公開されたこの記事によると、Googleは2012年から社内のチームの働き方を分析し、より生産性の高いチームのパターンを突き止めようとしたそうです。

 

グーグルが突きとめた!社員の「生産性」を高める唯一の方法はこうだ(小林 雅一) | 現代ビジネス | 講談社(1/4)

 

ところが、いくらチームワークや働き方を調べても、有効なパターンが見つからない。

 

困った研究チームがいろいろな角度から調査結果をあたってみた結果、浮かび上がってきたのは「他者への心遣いや同情、あるいは配慮や共感」というものだったそうです。

 

これがあるチームは何をやっても成功し、これがないチームは何をやってもダメだった、という分析です。

 

つまり「こんなことを言ったらチームメイトから馬鹿にされないだろうか」、あるいは「リーダーから叱られないだろうか」といった不安を、チームのメンバーから払拭する。心理学の専門用語では「心理的安全性(psychological safety)」と呼ばれる安らかな雰囲気をチーム内に育めるかどうかが、成功の鍵なのだという。

 

なんとなく、想像がつくような気がしますよね。

もちろん「Google的な成果を求められている」場合の成功と失敗、というケースに限った分析ですが、生産性向上に向けた活動の、ひとつの方向性とは言えそうです。

 

他者配慮ができるとは、自分と相対しているその他者との違い・距離を、認識・想像している、という意味で、「自分とはどういう存在か」の理解と意思があることが前提です。

 

これはつまり、自分が主体となった新しい価値創造の意思にもブレがない状態で、「モチベーション」の源泉でもあります。

 

・参考書籍:INNOVATION PATH イノベーションパス

 

つまり新しい付加価値創造=生産性の向上と、ダイバーシティを含む他者への配慮の姿勢を育むことは、セットになっているということです。

 

 

「他者配慮の重視」は時代の要請

なぜ「他者への配慮」のあるチームは生産性が上がるのか。

 

パッと見からすると、たとえば「意見が言いやすいから想像的なアイデアが出せる」とか、「ストレスなく働けるから」とかでしょうか。

 

さらに少し深めて、冒頭の山科先生の講演での言葉をお借りすると「世界が相対化・パーソナル化」している世界において、そうしたチームは自分が自分でいられる「居場所」として認識しやすいのかもしれません。

そうすると逆に、チーム内で雑談をして笑いあったりすることでストレスを解消できる場になっていたりします。

 

・参考書籍:人類進化の謎を解き明かす

 

またそもそも、自分と他者の距離を把握していないと、コミュニケーション効率が悪い、ということなのかもしれません。

 

 

 

では、どうやって他者配慮の姿勢を獲得していけばいいのでしょうか。

 

まずは、自分と「ふつう」という価値感から距離を置くことからだと思います。

 

 

いまの日本社会は、産業主義社会の実現、つまり工場で大量生産をして経済を豊かにする、そしてそのための均質な労働者を育成する、という目的のために高度に制度設計された社会です。

 

もともと生まれついた特性や家族環境、地域性はバラバラなのに、大人になったら同じことができ、同じように考えることができるように学校で教育されて社会に出ていきます。

以前はそれがうまくまわっていました。

 

 

ところが時代は変わり、資本集積だけでは価値を生めない、ひとりひとりの知恵と経験が必要なポスト産業主義社会が到来しています。

 

厚生労働省も、平成16年におこなわれた「働く者の生活と社会のあり方に関する懇談会」の中で、「ポスト工業主義の働き方」という可能性をうち出しています。

 

一人一人の個人が、その資質を伸ばし、才能を発揮するためには、それを可能とする多元的な教育システム多芸多能の生き方を受け入れ多元的な評価軸を持つ社会とバランスの取れた産業の存在が不可欠である。

 

つまり極論ですが、国ももう「ふつう」は捨てる時期がきたのかも、と言っています。

 

2020年に迫った大学入試改革はもちろん、平成30年頃から順次実施開始予定の改訂版学習指導要領でも、未来をみずから創りだしていく「主体性」を重視した教育が実施されようとしています。

 

バラバラの特性と経験をもつ人が主体性をもったとき、もはや「ふつう」は存在しません。

 

 

ところが、いまの社会人は「ふつう」が一番、と育ってきているわけですからそう簡単にはいきません。

40代中盤まではもしかすると「逃げ切れる」として、時代の変化に取り残されるのはいまの20代~40代前半の人です。

 

「ふつう」がはびこる会社には、新しい教育を受けた世代は見向きもしないでしょう。

 

 

最近の「働き方改革」の一連の流れも、こうした「労働者の主体化」への対応が本質にあります。

 

・参考記事、複業研究家 西村創一朗さんのブログ:「働かせ方改革」ではなく本当の「働き方改革」を。

 

現役世代はまず「自立」を

以上のように、日本的な「ふつう」に自分を丸投げしていればいい時代はもはや過ぎ去りました。

 

いまここにいる「わたし」と「あなた」がどう生きたいのかと、その関係性がすべてです。

 

このブログでご紹介している「大人の生き方3.0」のプロセスも参考にしていただきながら、自分と周囲の価値観をきりはなす「自立」をし、他者配慮の視点を持ちながら、主体的→協働的に自分の人生を生きていくことが、これからの時代をサバイブするため、個人にも、そして会社やコミュニティにも必要なことだと思います。

 

 

遅くなりましたが、今年もどうぞよろしくお願いします。

 

 

 

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→「大人の生き方3.0」等講演、執筆実績

 

 

 

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