発達障害の「生き方」研究所 | Hライフラボ

転職4回、うつで1年の休職歴あり。30歳を過ぎてADHD・アスペルガーまで発覚した人間が、妻と娘の育児のためにもがいた結果… 「生きづらさ」と戦いながらそこそこ稼ぐためのHライフラボ的・生き方3.0とは?

内向的な大人の発達障害で良かったと思える2つの理由

内向的な発達障害者の進む道

【こんなことが書いてあります】
・内向的な大人の発達障害は、ひとりでできる仕事に革新を生んで、自身の充足を得る

・控え目な性格に自信を持って、周囲がすごいと思うことではなく自分の興味を追求する

→「生き方」研究所記事一覧へ

 

 

人と話すととても疲れる。

雑談が苦手。

急に話を振られるとパニックになる。

 

特に社会に出て営業職を経験してから、外向的だと思っていた自分が実はこういった内向的な性格なことに気付かされました。

 

 

本当に、決して人づきあいが嫌いなわけではないのです。

友達から遊びに誘われれば予定が無い限りは遊びに行っていましたし、私自身も大学時代は100名規模のインカレサークルで副代表を任せてもらえるくらいには幅広く顔を売っていたつもりです。

 

でも、いざ飲み会や遊びに行く先では、どうも1人になってしまう。

学校で連れだって4人で帰っても、3人が前を歩いて楽しそうに話していて。

自分は横幅を取りすぎないように後ろを1人で歩く。

 

傍(はた)から周囲が楽しそうにしているのをクールに眺めている、というキャラもそのときは良かったのかもしれないです。

ただいつも、外向的に盛り上がれる仲間を見ると、うらやましさというか、引け目を感じていました。

 

そしていざコミュニケーションのチャンスが来たとしても、うまく間がつなげない。

 

これって、どうなんでしょう?

積極性が足りないだけだったんでしょうか?

 

 

会社でも人間関係を上手く作れないというのは、特に大企業では大きなハンディキャップになります。

 

「この書類の書き方をあの部署の人に教えてもらわなきゃいけない。」

「プロジェクトで足りない情報をあの人に聞かなくちゃ。」

 

こういったシーンは毎日のようにあるんですが、本当に大の苦手です。

 

聞くべき相手のところへ行くために、自分の席を立つまではいいんです。

でも途中でふと別のことを思い出したり、情けないことに思い出したフリをして引き返したり、席にいなかったことを理由にして仕事を先送り。

 

こうして、処理するべき小さな業務は大きな時限爆弾へ成長して、毎日の通勤のストレスになっていくんです・・・

 

 

そんなことに苦しんでいるうちに、自分が大人の発達障害で、アスペルガー、ADHDを併発していることが分かりました。

 

アスペルガーの自己評価を変えてくれた1冊

そんな時期に、私はあるプレゼンテーションと出会いました。

 

「内向的」でググッていると、スーザン・ケインという女性がTEDでやったプレゼンテーションの訳が引っかかったんです。

 

TEDはご存じの方も多いと思いますが、プレゼンテーションを題材にしたエンターテイメント番組で、自分の経験や研究をお客さんの前で披露するシンプルなプログラム。

 

いま探しても当時に読んだ記事が見当たらないんですが、このプレゼンでスーザン・ケインは、内向的だからこそのパワーがある、という画期的な発想を自分に与えてくれました。

 

「ぜひこの人の本が読みたい」

 

そんな衝動に突き動かされて、スーザン・ケインの最初の著書はまだ邦訳版が出ていなかった(邦訳版は2013年5月に出版されました)ため、生まれてはじめて洋書コーナーへ行き、著書の「Quiet」を購入。

 

単語が難しくまったく読めませんでしたが、辞書を使いながら少しずつ読み始めました。

…と、まだ1/4も読み進める前に邦訳版が出版。。。もちろん即買って邦訳版で読了。

 

このように読み終えるまで時間はかかりましたが、期待通りこの本は2つの大きな示唆を与えてくれました。

 

内向型人間の時代 社会を変える静かな人の力

内向型人間の時代 社会を変える静かな人の力

 

 

1、革新的なアイデアは内向型が「ひとりで」生みだす

スーザン・ケインはこの本で、アイデアを生み出すためのブレインストーミング(ブレスト)の万能性を否定しています。

 

内向型の人間は、興味を持ったテーマについて、ひとりでじっくりと考えることに向いている脳の構造をしていて、その作業が歴史上革新的なアイデアをもたらしてきているからです。

 

たしかに、何かの発明や科学的な発見が「~でのブレストからうまれた」なんて聞いたことあるでしょうか?

 

 

この本では、iphoneで有名なアップルの共同創業者の1人であるスティーブ・ウォズニアックが、世界で最初のパーソナル・コンピュータの開発を、1人でコツコツ続けて完成させたエピソードを紹介したうえで、私たち内向型の発達障害の人間には刺激的な文章をウォズニアックの自伝から引用しています。

 これまで会った発明家やエンジニアの大半は僕と似ているー内気で自分の世界を生きている。彼らはアーティストに近い。実際、彼らのなかでもとくにすぐれた人たちはアーティストそのものだ。そして、アーティストは単独で働くのが一番いい。(中略)もしきみが、発明家とアーティストの要素を持ったたぐい稀なエンジニアならば、僕はきみに実行するのが難しい助言をしようー1人で働け。独力で作業してこそ、革新的な品物を生みだすことができる。

 

ただしここで重要なのは、いくら実際に思考を巡らせるのが1人のときであったとしても、さまざまな情報が集まる会合などには欠かさず出席して、インプットを絶えず行っていたということです。

革新的なアイデアを生み出すには、読書だけでなく外向型の人のサポートによるコミュニケーションから得たインプット作業が必要ということです。

 

そして会合を企画するのは、多くが外向型の人々でしょう。

外向的な人間と内向的な人間はお互いに得意分野を補い合って生きています。

この視点は大人の発達障害者の仕事探しにも役立つでしょう。

 

さらに言うと、内向的な大人の発達障害者はその力を1人の時間に考えを巡らせて、「外向的な人間に伝える」ところまでが役割です。

ブログはその点、内向型の人間が生みだすアイデアを外向型の人が受信して世の中に送り出すには最高のツールだと思います。

 

 

補足になりますが本書はまた、そんな内向的な人間が無理をしてでも唯一外向的になれる分野が、その人にとっての「コア・パーソナル・プロジェクト」、つまり天職だとも言っています。

 

2、内向的発達障害者はフローに生きる

スーザン・ケインは、内向型がある特定の作業に強く没頭できることの説明として、ミハイ・チクセントミハイの「フロー」理論をもって説明しています。

 

フロー状態のことを説明すると非常に長くなってしまうのでここでは本書の説明を借りて、「人間が物事に完全に没頭し、精神的に集中している状態のこと」とします。

 

このフロー状態になると、極端に時間の流れが速くなっているように感じるとされていて、私は実際に仕事・プライベート関わらず、(データ)分析をしているときは時間が一瞬にして流れていくことに気がついてこの道を選びました。

 

前職の通信キャリアではろくに仕事がさばけずに過労でのべ1年間休職、大人の発達障害まで発覚して完全にお荷物扱いされていた自分が、グローバル外資企業で日本・オセアニア地域の四半期MVPを頂けるまでの結果を出すことができたのは、このフロー状態による集中力を使うことができた結果です。

 

 

そしてまた、そのフロー状態に入ると強い充足感・幸福感を得られることもチクセントミハイは挙げています。

 

私もこのブログで、なぜ自分がここまで変わることができたのかについて分析して、だれでもその変化を実践できるように情報を編集して体系化しました。

この分析~アウトプット作業でも強いフロー状態になっているので、たとえ仕事が終わり毎日22時を過ぎて帰宅して、夕食後から数時間、ブログの文章を書いたり大人の発達障害で困っている読者の方が必要な情報へアクセスしやすいよう修正作業をして明け方になっていても、たいへんな充足感とやりがいを感じます。

 

もし、あなたが内向型ならば、持って生まれた能力を使ってフローを見つけよう。内向型は、持続力や問題を解決するためのねばり強さ、思いがけない危険を避ける明敏さを持っている。(中略)だから、いつも自分らしくいよう。ゆっくりしたペースで着実に物事を進めたいのなら、周囲に流されて競争しなければと焦らないように心がけよう。(中略)自律性を活用してよい結果を得られるかどうかは、あなたしだいなのだ。

 

フロー状態自体は内向型でも外向型でもあり得ますが、内向型の財産や地位に対する執着があまりない特性も、チクセントミハイが定義するフローになるための条件に役立っています。

 

これらの点が、他の記事で大人の発達障害者はしっかりと自立、つまり周囲の世界の価値観に流される(給与がいい、カッコいい、地位も名誉もあるなど)ことなく、本当の自分の興味に気付ける状態になったうえで「自分が没頭できる仕事」「時間が早く経つ仕事」を探しましょう、と書いている主な理由です。

 

内向型大人の発達障害が生みだす「変化」

内向型と外向型は、この世界を形づくるメインの理(ことわり)である2項対立のひとつの形と見て間違いないでしょう。

 

人類は、そのどちらかだけでは、また外向型でもなく内向型でもない平均的な能力を持つ種族だけではおそらく生存できませんでした。

 

人類にある危機が訪れたとき、

 

・外向型だけでは、深い思索による生存への問題解決ができません。

・内向型だけでは、解決ができてもそのアイデアを広めることができません。

・平均的では、おそらくどちらもできなかったのでしょう。

 

こうして進化、淘汰の過程を経て残された特性の極ともいえる存在が、私たち大人の発達障害者です。

 

 

またおそらく、その活躍する時代には周期が存在します。

いまは外向型が活躍する時期を終え、次々と起こる難問解決のため、内向型の深い思索によってしか生み出せないレベルの新たなアイデアを必要としています。

 

自分の興味が出て没頭できる分野が、たとえどんなに細かく、ニッチな難問であってもいいんです。

 

「周囲の世界」が形作っている年収や肩書き、ブランドなど幻の価値観に惑わされることなく、「自分の世界」における価値を追求して、わずかでもブレイクスルーを達成して、充足感を得る人生を選びましょう。

 

そして実は面白いことに、人間、人類の歴史はそんなシナリオになるように設計されていると思っています。

 

→「生き方」研究所記事一覧へ