発達障害の「生き方」研究所 | Hライフラボ

転職4回、うつで1年の休職歴あり。30歳を過ぎてADHD・アスペルガーまで発覚した人間が、妻と娘の育児のためにもがいた結果… 「生きづらさ」と戦いながらそこそこ稼ぐためのHライフラボ的・生き方3.0とは?

成人発達理論や精神的自立は神経生物学的に説明できるのか

成人の精神的自立や発達への介入研究へ

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新年度になりました。まずはひとつご報告です。

 

4年以上お世話になった会社を、先月末で退社しました。

 

チームメンバーや上司などには、Facebookでもいろいろと感謝を伝えさせてもらいましたが、本当に最高のタイミングで最高の仕事場を与えてもらったとしか言えません。

 

自分がスピーディに自立できたのも、以前の記事でも書いたように「自立的な仕事を促し」(ある意味、メンタライジング的な=他者の視点を想像させることを促進する介入でした)てくれた上司の指導のおかげであり、また実際にそうしないと仕事にならなかった職場環境の影響も大きいと思います。

 

 

本当にありがとうございました。

 

 

 

そして4月からは、明星大学発達支援研究センターの研究員として、主にこのブログの延長の研究をしていきます。

 

これでようやく、フルタイムの仕事をしていたときにはなかなか手を付けられなくてモヤモヤしていた、先行研究論文レビューや実証研究にも時間を使っていけそうです。

 

 

このブログのメインターゲットである「軽度」な大人の発達障害の方の生きづらさは、何度でも言いますが精神的な「自立」「主体性の獲得」をもってかなり軽くできるはず、という信念は変わっていません。

 

先行研究に加え、ここ数回紹介している成人発達理論の知見も生かしながら、主体性獲得のためのプロセス確認、発達(介入)プログラムの開発と、プログラム適用の前提になる自己の状態アセスメントの勉強など、必要なことは山積みですが…

 

色々な流れの中でこのポジションを頂けたので、できるだけのことはやるつもりです。

もしかすると、その途中には読者の方々のサポートをお借りするときがあるかもしれません。

そのときは、どうか可能な範囲でご支援をいただければと思っています。

 

 

ちなみに、昨年2月の講演で話した内容に少し先行研究を踏まえた記事が、昨年度の発達支援研究センター紀要に掲載されました。

PDFでもダウンロードできるようになりましたので下にリンクを掲載しておきます。

 

この中で文献とともに紹介している仮説もまだ定説と言えるレベルのものではなかったり、特に実行機能(EF)の「抑制」とワーキングメモリ関連の記述がラフだったりと、ほとんどエッセイの域を出ませんが…

 

とりあえずの研究生活の原点ともいえそうな内容になっていると思います。

 

【公開シンポジウム要旨】発達障害のある人の「自分の見つけ方」「自分の育て方」をどのように支えるか

 

 

 

それぞれの立場における精神的自立の役割

 

ということで、先週から先行研究論文を手あたり次第読み漁る毎日です。

 

まずは、定型発達・発達障害者を含めた心の理論の発達プロセスやその違いについてと、神経生物学的な背景の確認も含めて読み進めています。

精神的自立はこのブログの表現なので、それが成人発達理論のどの概念にあたるかも確認したいですね。

 

 

まだたった数日ですし、それぞれ深く読みこめてもいない中ですが。

 

これまでの断片的な情報蓄積と、論文から得た多少の新しいインプットからの根拠のない直観としてですが、既存の仮説も含めてこんなことが言えるかもしれません。

 

 

1.ASD(自閉症スペクトラム)の遺伝的要素(とその後のASD的な発達)がほぼ無いか弱い人は、「自分と同じような要素を持った(=ASD的ではない)人の」感情や気持ちを無意識に感じ取りやすく、その読み取った情報を無意識に自分の行動パターンへ取り込むように発達する。

 

2.ASDの遺伝的要素が強いか多めな人は、共同注意の発達プロセスの一部が多数派と異なる結果、周囲の人の感情や気持ちの影響を受けにくくなる。(俗にいう「空気が読めない」状態)

 

3.1のカテゴリの人が、自分と異なる感覚の他者(男性から見た女性の気持ち、異文化に育った人など)の気持ちを推測、理解するには、「精神的自立(主体性)」が必要。

 

4.2のカテゴリの人も同様に、1の人や自分と違う他者の気持ちを明確にイメージするには、「精神的自立(主体性)」が必要。

 

 

 

以上のことを現代的な視点から表現してみると。

 

・ASDの傾向が無い人は、「自分の行動が、どうしても周囲の人の空気に(無意識に)足を引っ張られる」という足かせをはめており、創造的、共創的なアクションや発想が生まれづらい

・ASD傾向の人は、多数派に合わせて制度化、システム化された社会の中で、「あるべき姿」と行動特性にギャップが大きく孤立しがちで、生きづらさを抱えやすい

 

ということになるんじゃないかと思います。

(ADHDの特性も、結果的にはほぼ似たような状況になる気がしますが要検討です)

 

 

どちらのカテゴリに寄っていたとしても、現代において上記の2つの「~づらさ」を乗り越えるためには、精神的自立をして、主体性を身につけることが必要なのではないでしょうか。

これは、「ティール組織」的なモジュール化した人材の開発にも必要になる要素だと思います。

 

 

成人発達理論と精神的自立への介入のための神経生物学的研究

 

 

これまで書いたことの裏付けをするのはもちろんですが、次に「どう介入すれば発達が促されるのか」という重要な課題も残ります。

 

ざっと海外も含めて先行研究をあたってみた印象ですが、成人の発達については各分野においてまだまだ地道な研究の積み重ねをしていかないと、効果的な介入方法は得られなそうです。

 

 

発達障害の分野については、元々の発達心理学における研究により、幼児~青年期を中心にある程度機能的な解明は進みました。

ただここ20年くらいで発達したfNRI(磁気共鳴機能画像法)の技術によって、神経生物学の視点からの分析も進んだ結果、逆に「どこがどういう状態だから~という介入が必要」というところまで踏み込んで説明する必要が出てきたのではないかと思っています。

 

 

定型発達の人向けでは、ようやく成人の精神的自立や発達への介入法について、その効果の科学的検証が進められつつある状況のようです。

 

ただ科学的検証と言っても、あくまで「成人発達理論」におけるアセスメントを用いた介入効果の測定であって、神経生物学のレベルで検証が進められているものはまだ見当たりません。

 

脳科学の知見も取り入れられている成人発達理論ももちろんあるようですが…

そもそもそれぞれの理論における「発達段階」を、心理学からではなく神経生物学的に表現しているものはまだエッセイレベルの論文しか見たことがない状況です。

(まだ調べ方が浅いのも事実ですが)

 

つまり介入対象群が、(発達段階が同じとしても)もともとどんな脳の状況なのかを神経生物学的に把握されないまま介入のアクションが取られ、結果を測定されているということになります。

 

これでは厳密に介入アクションの何がどう効いたのかが分からないし、発達を促すアクションがそれで十分なのかさえ確認できません。

(その介入で発達を促された人が、介入の前にすでに発達条件を備えていた可能性)

 

 

ということで、今後はまず介入対象とする人の状態をなるべく広く仮定して、介入方法も先行研究を参考に広く仮説を取り、徐々にそれぞれ精緻にしていく…というアプローチが考えられます。

(その多くは、このブログで「大人の生き方3.0」としてお勧めしているアクションと重なりそうです)

 

またこのアプローチに関連した話題は、こちらで情報更新していきます。

 

 

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***<「大人の生き方3.0」全78+未整理記事の目次はこちら>*** 

 

 

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