発達障害改善のコツが「よりよく発達した他者と夢中で楽しく遊ぶ」だと確認した話
真逆の得意を持った2人が、同じ人生改善方法で盛り上がった
昨年の10月、朝9時前。
いつもの通勤と同じ時間帯の山手線。
ふだんは通過している上野駅で降りて、上越新幹線のホームへ。
自由席だったので、少しでも空いているんじゃないかと思った先頭車両のほうまで歩いていきます。
ところがいざ乗り込んで出発してみると、その車両にはわたしの他にひとりしか乗っていませんでした。
思いがけず落ち着ける車内でコンビニのおにぎりと缶の味噌汁で朝食をとりながら、LD学会で実施するプレゼンのスライドチェックをします。
「適応的認知獲得のための余暇活動に必要な要素の検討」
ムリをしてむずかしい言い回しにしていますが・・・
要は、「生きやすいココロを育てるためには、ヒマなときどんなことをすればいいか」について言いたいことをまとめただけです。
宇都宮までは案外アッという間で、それほど十分に練習をする余裕もないまま会場へ着いていざ本番。
・・・シンポジウムも含めて、個人的には 話し足りない感があったなぁと思いながら片付けていると、時間の無い中でも何人かの研究者の方が話しかけてくださいました。
そしてそのうちの一人は、偶然ですが見覚えがあった方だったです。
2012年、発達障害と診断されてから一番最初に観たテレビ番組、NHKの「バリバラ」。
そこにADHD当事者でありマンガ家、という肩書で出演されていた、「あーさ」さんでした。
「発達障害の改善」という言葉の意味は深い
その場で名刺を交換させていただいたあーささんは、勉強のために久々に学会に出られたそうで、普段は地元でご活動されているとのことでした。
その後もいくつか学会のセッションが続いていたので、ゆっくりお話しする時間が無かったのですが。
またいつかお会いできれば、ご挨拶も済んだしもっとゆっくり意見交換できるかも、と思いながら、宇都宮をあとにしました。
するとそれからひと月も経たないうちに、なんとあーささんからご連絡を頂けたのです・・・!
普段は遠方の地元にいらっしゃるようなんですが、珍しく仕事で東京にいらっしゃるとのこと。
あーささんは短期間の滞在だったのですが、1時間ほどお互い都合が合うところがあり、ぜひ情報交換をしましょうということでふたたびお会いすることになりました。
お話しが始まってしばらくすると、マンガ家のあーささんはかなりアーティスティックな感覚をお持ちの方だ、ということが分かってきました。
それでもわたしの理屈っぽい話にもソツなく対応してもらえるところ、さすがでした。
そんな脳の特徴的には真逆の2人でしたが、支援の話に関しては最終的なゴールが「本人がどう生きていきたいのか」をクリアにすること、という点で一致していたんです。
(あーささん、ご主張についてわたしが間違って受け取っていたら訂正します…)
これがどういうことか、というと。
発達障害の人が「ふつう」になったところで、生きづらさがなくなるかというと、決してそうではないのがいまの社会です。
ソーシャルスキルトレーニングをしたり、「ふつう」の人の考え方を学んだり。
いまの社会で「ふつう」に振る舞えるようになる能力を身につければ、もちろんその生きづらさの「程度」はかなり楽になるはずです。
でも、その方向性での支援が本当にその人のための支援になるのか?
では支援をしていくにあたって、どこが明確な「ゴール=その人の幸せ」なのか?
こうした問いは、昨年のLD学会のテーマが「発達障害の人が大人になって幸せになるために」ということだったためもありますが、学会中でも何度が議論に上がったようです。
もちろん具体的な幸せは、それぞれの人だけが見つけられるものですが。
ただ、その「幸せ」とは何なのか?
それを見つけられるようになるための支援というのが何なのか?
というのがクリアになっていないのが現状です。
その状況の中で、少しでも希望を持つことができるまでになった立場として、意気投合したポイントが、「ゴール=自分の人生を主体性をもって生きる」ことができるようになること、です。
(「支援」の在り方については、様々な方が直面している現実をベースにした考え方があると思いますので、もちろんこれが唯一の方向性だと言い切るわけではありません。あくまで現時点のわたし個人のスタイルです)
「ふつう」という幻想が消えゆく社会の鍵、「自立」「主体性」
このブログで再三表現している「自立」とは、もちろんそのことを指しています。
自分の感じていることと、他人や社会から押し付けられている価値を切り離す。
そして1年前のこちらの記事
でも書いた結論の通り、よりよく発達した大人といっしょに夢中で遊ぶことで、その人の視野を取り込みながらより生きやすいココロを発達させることができます。
さらにあーささんが最近執筆されたこの本でも、見事に「自分のココロはいまどう感じているか」、そして「遊び」の大切さが表現されています。
そして「自分が楽しいこと」を通して実行したメタ認知(他者の視点を想像する・自分のココロの状態を自分でモニターする)トレーニングの効果は、単純にコミュニケーションを良くしたり、主体性を回復させたりできるだけではなく、前頭全皮質の抑制回路を中心に脳の未発達ニューロンを発達させ、発達障害のその他の症状も改善させる可能性があります。
(Youtuberの方からわたしの書籍を紹介頂いている動画の中でも、その可能性が考えられるコメントをいただいています)
いっぽうの社会全体の状況はどうでしょうか。
この1年でよりいっそう、「主体性」をもってお互いの世界を認め合える人間=それぞれの「ふつう」を大切にできる能力が、福祉という枠の外でも注目されはじめています。
以下は、いま普及している「階層型」の会社にかわり、今後徐々に増えていく「進化型(ティール)」組織の中で重要なポジションを占める、進化型(=前の記事の発達段階4~5辺りに相当)のマインドを持つ人の特徴です。
心理学者たちは、「欠点を見る」のではなく「長所を生かす」というパラダイム変化が起こっていると指摘する。これは経営から教育、心理学からヘルスケアなど、さまざまな分野でゆっくりと深く進行している。
私たちは自分の信念を点検し、実際にはそれが優れていることを発見するのだが、同時にほかの人のことも、基本的に等しい価値の人間として受け入れることができる。
こうした新しく(そして実は伝統的な)発想で「自分の人生を生きる」ことでパフォーマンスを最大化するための組織・コミュニティ・ヒトが増えています。
ということはこれから間違いなく、この日本の中でもわたしたちが生きやすい場所がどんどん増えてくるはずです。
その変化のスピードを早めるために、何ができるか。
変化していくエリアを大きくするために、何ができるか。
引き続き、そのために必要とされるロジックや物事の仕組みを明らかにし、社会へインフラとして植え付けていくアクションを続けていきたいと思います。
・公開セミナーのお知らせ(社会福祉法人三和会様公開セミナー)
【日 時】 平成30年2月28日(水) 13:30開始 (13:00~受付)
【場 所】 桐生市民文化会館 4Fスカイホール(群馬県桐生市)
【内 容】 発達障害の自分の育て方 ~自立して主体的に生きる~
【参加費】 無 料
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***<「大人の生き方3.0」全78+未整理記事の目次はこちら>***
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