大人の発達障害者がプレゼン力を鍛えると仕事で成功する2つの理由
大人の発達障害克服とプレゼン力の深い関係
【こんなことが書いてあります】
・プレゼン力を鍛えると、コミュニケーション力が上がるだけでなく、鍛えるプロセスそのものが、自立を促進する効果がある
・プレゼンの場数を踏むためには、仕事以外の場でもプレゼンをする工夫が必要
プレゼン力を鍛えると、なぜか「自分力」があがります。
以前の記事「大人の発達障害を「育児」で克服する」の最後で、思わせぶりな終わり方をしてしまったので続きを書きたいと思います。
私はあと2つ、同じロジックで自立を助ける行動があると思っています。
それは、「プレゼンテーションの作成」と「天職」です。
この記事でわたしは、サポーティブな育児、つまり自分が子どもの世界に立って、共感的に接していき自立をたすけることが、実は自分の自立・自己実現に直結している、と書きました。
なぜなら、自分のエゴというか、自分がしらずしらずのうちに影響されている周囲の世界の価値と、それに影響されてしまっている自分からいったん離れて、子どもの世界を想像する、という本来の自分のみをベースにした活動を行うことになるからです。
そして本来の自分のみがベースになっている時間の積み重ねが、自分が本当にやりたいことを自分で探しあてるためには必要なのでした。
ちなみに座禅や瞑想もおそらく同じような効果がある、というのが私の感覚であることは以前に書きました。
外資系で特に役立つ、伝えるためのプレゼン力
ではプレゼン力は、どのように大人の発達障害者の仕事の成功と関係があるのでしょう。
1つめには、「伝わる」プレゼンテーションとはどういうものかを学んでいくと、わたしたち大人の発達障害者、特にアスペルガーが日々上司や同僚と仕事上のコミュニケーションをする力が飛躍的に向上するからです。
わたしたちはプレゼンテーションというと、大きな会場でマイクを使って大勢に語りかける様子を想像しがちです。
ですがノートPCやプロジェクターがここまで普及した時代では、日々のちょっとした上司への報告やチーム内の会議では、パワーポイントに要点を書いてそれで済ます、ということも多く、これも立派な仕事上のプレゼンテーションです。
あまり前者のケースは考えられない事務職でも、後者のような日々のコミュニケーションとしてのプレゼンテーションは多くなっています。
この「ちょっとした」パワーポイントを作るとき、プレゼン力を鍛えるときに身につけた「伝わる」スライド作成のノウハウを使うことで、いままで
「それってどういうこと?」
「つまり何がいいたいの?」
という上司や同僚の質問にたどたどしく答える必要と時間はなくなります。
こんなとき、不意の質問や展開に弱いのがアスペルガーやADHDですから、マイナス評価につながりやすい展開が避けられるのは大変ありがたいですよね。
そしてそのかわりに、
「わかりやすいね!」
「それなら次のアクションはこうなるね」
という明快な反応がかえってくるようになります。
せっかく「1~10」という仕事をしたのに、報告スライドが悪いせいで「5」しかできていないと受け取られたり、「3」や「6」を認識してもらえないためにまったく結論が理解されないのではたいへんもったいないです。
さらにわたしがこちらも以前の記事「転職4回で年収2倍の精神障害&発達障害者による就職・転職成功の方程式(前編)」で書いたとおり、大人の発達障害者が仕事である程度の収入を確保するには、一般就労経験をもとに大人の発達障害者を受け入れている外資系の障害者雇用への転職を目指すことがまず一つの道です。
外資系へ転職して変わったことは、上司から日々の仕事の指示があまりない代わりに、定期的に1×1(ワンオンワン)という個人面談で仕事上の報告・相談・フィードバック(どういう仕事がうまくて、うまくいっていないところはどこかを教えてもらうこと)をすることだと思います。
頻度は上司によりまちまちですが、わたしは原則週に1回、30分もらっていました。
この1×1で、「伝わる」スライド術を駆使したプレゼンをしていけば、上司の評価が非常に高まるといっていいでしょう。
そして、外資系では上司の評価が昇給・昇進・解雇のすべてを決めていきます。
そのために、わたしたち大人の発達障害者は、まず伝えるための「ノウハウ」を身につけていきましょう。
相手の立場を深く想像することが自立への道
プレゼン力が大人の発達障害者の仕事の成功に関係がある理由の2つめには、プレゼン力を上げていく作業そのものが、わたしたち大人の発達障害者が本来の自分のやりたいこと、天職を見つける大きな助けになるからです。
それはなぜかというと、伝える相手の立場を想像しながらプレゼンテーション資料を作ることで、この記事の最初に説明した育児や瞑想、座禅と同じ効果があり、積み重ねていくことで自分本来の思考を取り戻していけるからです。
わたしたちがプレゼン資料を作るとき、伝わるノウハウを使ってスライドを作ることよりさらに大切なのは、プレゼンをする相手の立場を考慮した内容を考えることです。
就職説明会に来た学生に対して投資家向けのプレゼンをしても、まったく意味がありません。
家を買いたがっているお客さんに、車をおススメしてもまったく響きません。
プレゼンをする相手がどんな立場で、どんな生活をして、何を欲しがっているのかなどを想像して、リサーチして、スライドや資料を用意します。
そのためには、まず自分を相手の世界へ突っ込んでいくことが必要です。
そしてこれは育児のときとまったく同じロジック、自分を相手の世界へ没頭させること同じだと思いませんか?
スライドを作るたびに、相手のことを深く想う。
そのたびにわたしはわたしになっていきます。
伝わるプレゼンのノウハウは座学で
では具体的にどうやってプレゼン力を鍛えていけばいいのでしょうか。
これは学ぼうとする要素によって異なります。
大人の発達障害者がプレゼン力を鍛えると仕事で成功する1つめの理由である、「伝わる」プレゼンテーションを身につけるためのプロセスは、主に座学で大丈夫です。
一度知識として学んでしまえば、あとはどんどん使うだけだからです。
長くなってしまうので、ここでは「伝わる」プレゼンテーションのつくり方について具体的には説明できませんが、わたしがたくさんのプレゼン関係の書籍を読んだ中で「当たり」であり「使える(パクれる)」本をいくつか参考資料としてあげておきます。
パクれるスライドのデザイン例も豊富ですが、なによりプレゼンはシンプルであれ、という原理原則についての根本的な「思想」が語られているところがすばらしいです。 必携本。
プレゼンテーション・パターン: 創造を誘発する表現のヒント (パターン・ランゲージ・ブックス)
- 作者: 井庭崇,井庭研究室
- 出版社/メーカー: 慶應義塾大学出版会
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評価が分かれる本だと思いますが、個人的には隠れた良書だと思います。
スライドなどの画像はまったくないです。ただ中心にある思想である、「プレゼンテーションは単なる伝達ではなく想像の誘発」の視点は、わたしがこれまで書いてきた「自分の世界」「相手の世界への没頭」に親和性があって、このブログの発想に違和感がない方であればたいへん使いやすい方法論です。
そして最終章では「生き方の創造」をテーマに、優れたプレゼンテーションを行うには、それぞれ本来の生き方をしていなければ説得力は出てこないと説明しています。
これら最初と最後の章だけでも、一読をおススメします。
デザインを科学する 人はなぜその色や形に惹かれるのか? (サイエンス・アイ新書)
- 作者: ポーポー・ポロダクション
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人間の脳、つまり物事の認識や判断が色やデザインからどんな影響を受けるかについてやさしく説明されている本。
これを知っていると知らないとでは、普段何気なく色や形、位置を決めてしまっているだけに大きな差が出ます。
これらの知識を意識して使っていき、毎回の仕事で説明する資料を作っていけば次第にわたしたちのプレゼンへの評価が上がってくるでしょう。
とにかくプレゼンする場数を増やす
そして2つめの理由である「相手の立場を想像する力」を鍛えるには、やはり場数を踏むしかありません。
わたしは仕事のほか、読書会、ビブリオバトルやいろいろなイベントをおもにプレゼン力を鍛える場として使っていました。
というよりも、楽しくて通っていたらいつの間にか自分に変化が起きていた、という感じでしょうか。
そんな場が見つかるのかベストですね。
また最近では、周囲からもハイレベルな刺激を受けるためにプレゼンテーション講師希望者や経営者も多く受けている講座で勉強させていただいたりしています。
この講座ではスライド作成ノウハウを学ぶ前に、「自分が本気でやりたいこと、プレゼンしたいこと」を明確にするところから始めるんです。
正直、その初回クラスが目的で受講したようなものなのですが、まさにこれがきっかけになり、わたしはこのブログの構想をスタートささせることができました。
この講座をはじめ、わたしが大人の発達障害を克服するために参加したイベントは、また専用に機会を設けてご紹介していきたいと思います。
(大人の発達障害克服のために必要なアクションは個人個人で差があります。これに行けば治る、という性質のものでは一切ありませんのでご注意ください)